ハラル認証について
ムスリムの安心安全マーク
「ハラル認証」
ハラル、ハラムの区別は原材料だけであれば容易に判断ができますが、私たちが購入する加工品などの製品には多くの成分が含まれているため、ハラルかハラムかどうかの見分けがつきません。そこで、宗教と食品衛生の専門家(ハラル認証機関)がハラルかどうかの検査をしてハラル性を保証するのが「ハラル認証」という制度です。
ハラル(ハラール)認証とは
ハラル(ハラール)認証とは、宗教と食品衛生の専門家(ハラル認証機関)がハラルかどうかの検査をしてハラル性を保証する制度です。ハラル認証機関でその製品がハラルであると認められれば、そのハラル認証機関のマークが製品に与えられます。ハラル認証マークのある製品は、豚やアルコールなどの禁止されている成分が一切含まれていないことを保証するだけではなく、その製品が製造環境・品質・プロセスを含む全てがイスラム法に則り基準をクリアしているという意味があります。そのため、ハラルマークがあれば、ムスリムが自分で成分を調べなくても「安心・安全な製品」と認識し購入する際の判断材料になります。
しかし、その一方で問題視されている部分もあります。現在、ハラル認証機関は世界に300以上あると言われていますが世界的な統一基準がないので、その判断基準や指導内容は認証機関や団体によって異なります。例えば、ハラル認証制度は原材料だけではなく製造環境にも対応が求められますが、工場全体をハラルの対象として判断する認証機関もあれば、実質的にコンタミネーション(交差汚染)がなければ、ハラルでない商品を同じ工場内で製造していても、製造ラインごとに認証を出す認証機関もあります。一部の国を除き任意の制度であり、全世界に共通する有効な認証は無いため、認証を取得する際は注意が必要です。
私たちにとって、ハラルを全て覚えておくというのは難しいことなので、基本的には「ハラムを避ける」という考え方をすると分かりやすいでしょう。また、ハラルとハラムについては、国や地域であったり、個人や学派によっても解釈が異なる場合があり、最終的には自己責任で判断することも許されているので、例外も生じてきます。ハラル関連のビジネスにおいては、このような部分を念頭に入れておくことも大切なポイントなのです。
ハラル認証機関・団体の現状
日本でも当協会が把握しているだけで30以上のハラル認証機関が存在しますが、統一基準はなく各機関の法人格や団体もバラバラで認証取得にかかる費用もそれぞれ異なります。あえて言うならば、許認可も届出も必要がないので、誰でも始められる状況です。また、時間とお金を費やしてせっかく取得したハラル認証でも有効期限があるので、監査や更新費用の問題、取引先の確保が難しく更新しないという企業も存在します。
ハラル認証業界は新しいゆえ、まだまだ変化が激しいのが現状です。
そのような変化に適切な対応ができる専門家や市場動向を見据えた最新の情報をどう得るかが重要になります。
ハラル認証の歴史
ハラル認証は、1960年頃にマレーシアで始まりました。マレーシアの認証は国が運営している略称JAKIM(ジャキム:マレーシア連邦政府総理府イスラーム開発庁)と呼ばれています。イスラム教が国教であるマレーシアでは、多民族・多宗教の上、経済発展により輸入品や加工品が増え、成分からは何が安全であるのか判断できなくなったことから、国がチェックをし、ムスリムが安心して食品を購入できる制度を作りました。このような経緯でハラル認証制度の原形ができ、現在マレーシアはハラルの工業団地(ハラルパーク)を建設し、外国の企業を積極的に誘致しています。
隣国のムスリム大国であるインドネシアは1970年代にハラル認証制度をスタートさせました。これまでインドネシアの認証機関はLPPOM-MUI(インドネシア・ウラマー評議会の食品・医薬品・化粧品検査機関)でしたが、新法では宗教省大臣の直下に新設のハラル製品保証実施機関(Badan Penyelenggara Jaminan Produk Halal:BPJPH)が中心となり認証発行などの実務を行うとされています。
東南アジア、アメリカ、EU、ブラジル、オーストラリアなどもハラル認証制度をスタートさせ、現在、世界中に300団体以上ものハラル認証機関があると言われています。
ハラル認証取得のメリット
食品輸出の際には輸出先の国ごとに様々な規制があります。輸出においてのハラルもその規制の一つです。イスラム諸国への輸出特に食肉に関しては、一般的に輸出先が認めるハラル認証を取得する必要があります。輸出先によっては必ずしもハラル認証が必要とは限りませんが、ハラル認証を受けた商品はイスラム諸国に輸出する際には有利に働きます。
また、すでに輸出している商品でも、海外の取引先から原料などのハラル認証を取得するよう要請がある場合もあります。
現在、ブラジルはハラルチキン、オーストラリアはハラルビーフの世界一の輸出国と言われています。自国のムスリム人口が少数であるにも関わらず、ハラルの食肉を戦略的輸出品目にして成功しているケースもあります。
ハラル認証の4つのチェックポイント
ハラル認証を取得する際には大きく分けて4つのチェックポイントがあります。
- 原材料
- 原料がハラルかどうか。
- 保管状況、製造ライン
- 保管や製造過程でハラムなものとコンタミネーション(汚染)せず、清潔な状態が保たれているか。
- 従業員教育
- 従業員は十分に理解できているか。
- 管理体制
- ハラルと非ハラルが分けて管理されているか。体制や書類管理に問題がないか。
1と2ではハードである設備面のチェック、3と4ではソフト面が整っているかが審査されます。ハラル認証制度には、「イスラム法に適合している(HALAL)」であることと「清潔・安全・健康・高品質(Thoyyiban)」という2 つの概念があります。基本的な考え方としては、私たちの体は食べたものから形成されているので、汚染されていない体に良いものを食べましょうということです。
また、ハラルの対象は食品だけにとどまらず、健康食品・化粧品・生活用品・医薬品などの製造業はもちろん、小売・販売・観光・ホテル・レストラン・物流・金融など幅広い分野に及び、いずれも2つの概念が適用されています。
ハラルサプライチェーン
ハラルの考え方は「農場から食卓まで」です。ハラル認証機関などから要求されることは、※サプライチェーンの全てがハラル性を維持している状態です。
日本ではハラル専用の流通は費用対効果が悪く困難と言われてきましたが近年、日通などの大手ではハラル対応コンテナによるハラル製品の鉄道輸送を実施し、新しい需要の拡大が期待されています。
※製品の原材料が生産されてから消費者に届くまでの一連の工程。