FOOMA JAPAN 2026 視察レポート ―中東市場で売れそうな食品製造機械を探しに―

1. はじめに
2026年6月5日、東京ビッグサイトで開催されたFOOMA JAPAN 2026に、ハラル・ジャパン協会のインターン生として参加してきました。FOOMAは食品製造・加工機械の国際見本市で、毎年多くの国内外メーカーが出展する業界最大級のイベントです。今回の目的はシンプルで、「中東・GCC市場で売れそうな日本の機械・技術はあるか」を自分の目で確かめてくることでした。会場を歩き回って話を聞いた中から、特に可能性を感じた4つの技術カテゴリについてレポートにまとめました。
2. 気になった技術・製品
2-1. 自動食肉加工機械
国内シェアの高いメーカーが出展していた自動食肉加工機械。面白かったのは、潤滑油の扱い方です。機械には当然オイルが必要ですが、このメーカーは重力を利用した設計によって食材と油が絶対に触れない構造を実現しています。これは、ハラール認証の観点からかなり重要なポイントだと感じました。イスラーム法では不浄な物質(ナジャサ)が食材に触れるとハラール性が失われる可能性があるので、「油が食材に一切触れない」という設計はそのまま認証取得上の強みになります。中東の食肉処理業者に刺さる訴求軸だと感じました。
2-2. 水・オゾンを使った殺菌技術
アルコールも化学薬剤も一切使わず、水とオゾンだけで殺菌・消毒できる技術を持つメーカーがありました。ハラール食品の製造ラインで殺菌剤を使う場合、その成分がハラール認証審査で問題になることがあります。ただしこの技術は原理的に化学物質を使わないため、ハラール適合性が自動的に担保されやすいのでは、と感じました。アジアでの導入実績もある企業様もいるとのことで、食肉処理施設やハラール認証工場への導入シナリオが描きやすいです。GCCは後述のとおり工業用水が比較的手頃なため、ランニングコストの面でも現地に合いそうだと思いました。
2-3. アルカリ電解水洗浄システム
水を電気分解して作るアルカリ電解水で、洗剤・除菌・消臭を一本化できる洗浄システム。こちらも化学薬剤不使用なのでハラール適合性が高いと思います。注目したいのはB2B(業務用)だけでなくB2C(一般消費者向け)ラインも持っている会社さんがいる点で、GCC市場では業務施設への導入と家庭用製品販売の両面で展開できる可能性があります。すでに海外への輸出実績があり、海外対応のノウハウが蓄積されている点も頼もしいです。海外展開では純水製造装置とのセット販売も行っているとのことで、まとめて提案できる体制が整っている点も魅力だと感じました。
2-4. コンテナ型栽培装置
個人的に一番「これは面白い」と感じたのがこの技術です。コンテナの中で水を循環させてわさびなど、中東の灼熱では到底栽培不可能な野菜をコンテナで管理して栽培するシステムで、コンテナごと輸出することも、装置だけを現地に設置することもできます。また、野菜は一次農産物なのでハラール認証が不要という点が大きいです。他の機械と比べて市場参入の手続きがシンプルなのは、ビジネス的にかなりのアドバンテージだと思います。さらに後述するGCCの安価な電力環境と節水設計の組み合わせが非常に相性が良く、現地の運用コストを抑えられると思います。高級レストランやホテル向けに中東では見ないレア野菜を現地生産するというシナリオは、プレミアム需要の高いGCC市場と相性がいいと感じました。
3. GCCの電気代・水道代について
GCCへの機械輸出を検討する際、電力コストと水道コストは避けて通れない要素です。どんなに優れた機械でも、現地での稼働コストが高ければビジネスとして成立しません。特に食品加工機械は連続稼働が前提となるため、電気代・水道代が日々の運用費に直結します。GCC市場はこの点で特徴的な構造を持っており、産油国ならではの安価な電力と、海水淡水化に依存する水事情が共存しています。現地の光熱費環境を正確に把握しておくことが、機械選定の説得力と価格提案の精度を高める上で不可欠です。実際のデータを調べてみたのでまとめておきます。
3-1. 電気代
サウジアラビアの産業用電力単価は約0.074ドル/kWhで、世界平均(約0.162ドル/kWh)の半分以下です(GlobalPetrolPrices, 2025)。UAEドバイも0.230 AED/kWh(約0.063ドル)スタートの段階制料金を採用しており(DEWA Bill Calculator, 2026)、東南アジアと比べてもかなり安い水準にあります。タイが約0.091ドル/kWh、ベトナムが約0.104ドル/kWhと報告されており(ASEAN Centre for Energy, 2024)、GCCが石油・天然ガスの産出国であることが電力コストに直結しているのがよくわかります(IEA, 2026)。
3-2. 水道代
ドバイの商業・産業用水道料金は0~45m³の範囲で7.70 AED/m³(約2.10ドル)となっており(UAE Stories, 2025)、日本の工業用水(約20円/m³)と比べると高い。GCCは淡水資源がほぼなく、飲料水の大部分を海水淡水化で賄っています。ただしDEWAは2023年に0.389ドル/m³という過去最低の淡水化調達単価を記録しており(DEWA, 2023)、技術革新によってコストは下がり続けています。電力が安い分、水の高さはある程度吸収できる構造だと言えます。
3-3. 各技術との相性
このコスト構造で見ると、「電力をたくさん使うが水は少なくて済む」設計の技術が最もGCC向きです。水ベースの殺菌・洗浄技術は水の使用量をどう抑えるかが現地展開のカギになりそうで、省水設計や使用量の可視化といった訴求が効いてくると思います。
4. まとめ
今回のFOOMA視察を通じて、中東市場に可能性がある日本の食品機械技術には共通点があると感じました。
- ・化学薬剤不使用など、ハラール適合性が構造的に高いもの
- ・安い電力を活かせる省エネ設計のもの
- ・認証手続きが少なくて済む一次産品関連のもの
GCC諸国は食の安全意識が高まっており、ハラール産業も拡大傾向にあります。日本の技術はその品質の高さから一定の信頼感がありますが、現地パートナーの開拓や認証対応のサポートがあるかどうかが参入の現実的なカギになると感じました。ハラル・ジャパン協会では引き続きこうした日本企業と中東市場をつなぐ取り組みを進めてまいります。関心のある企業・機関からのお問い合わせをお待ちしております。
文責:ハラル・ジャパン協会 インターン生 武藤慶之介
参考文献
- ASEAN Centre for Energy. “ASEAN Electricity Tariffs November 2024.” Scribd, 29 Nov. 2024, www.scribd.com/document/830410915/ASEAN-Rates-November-2024-final.
- Dubai Electricity and Water Authority (DEWA). “DEWA Receives the Lowest Water Levelized Tariff of 0.38923 US Dollars per Cubic Meter.” DEWA Official Website, May 2023, www.dewa.gov.ae/en/about-us/media-publications/latest-news/2023/05/dewa-receives-the-lowest-water.
- “DEWA Bill Calculator (Dubai).” UAE Utility Bill Calculator, Accessed 5 June 2026, utilitybilluae.com/dewa-bill-calculator-dubai/.
- “Dubai’s 2025 Water Prices: A Comprehensive Guide for Residents and Businesses.” UAE Stories, 22 May 2025, uaestories.com/dubais-2025-water-prices-a-comprehensive-guide/.
- GlobalPetrolPrices.com. “Saudi Arabia Electricity Prices, September 2025.” GlobalPetrolPrices.com, Accessed 5 June 2026, www.globalpetrolprices.com/Saudi-Arabia/electricity_prices/.
- International Energy Agency. “Electricity Prices — 2026 Analysis.” IEA, 7 Mar. 2026, www.iea.org/reports/electricity-2026/prices.
- “Summary Analysis of Electricity Prices in Five Emerging Southeast Asian Solar and Energy Storage Markets.” JINGSUN Power, 12 Jan. 2026, www.jingsun-power.com/news/summary-analysis-of-electricity-prices-in-five-85389278.html.
8. “UAE Water Bill Estimator (All Emirates).” UAE Utility Bill Calculator, 31 Jan. 2026, utilitybilluae.com/uae-water-bill-estimator/





























