「タイはハラル輸出の拠点となるのか?―THAIFEX 2025で見えた現場の動き」現地取材レポート1/3
2025年5月27日~5月31日、バンコクで開催されたアジア最大級の食品展示会「THAIFEX – Anuga Asia 2025」に足を運びました。
会場にはアジア各国をはじめ、世界中の食品・飲料関連企業が出展し、各社が海外市場を見据えた商品・サービスを積極的にアピールしていました。

【THAIFEXの会場全景】
会場を巡る中で印象的だったのは、イスラム市場を視野に入れた“ハラル対応製品”に関する出展が一定数見られたことです。
ハラル(Halal)とは、イスラム教の教えに従って「許されたもの」を意味し、食品では主に豚やアルコールを含まない、特定のルールに則った製造・流通が求められます。インドネシア、マレーシアなどのバイヤーにとっては、ハラル認証の取得が取引の前提条件となっているケースも多く、今やハラル対応は「輸出戦略の要」と言っても過言ではありません。
今回の展示では、タイを含む各国のOEM(受託製造)企業が、中東やASEAN市場への輸出を強く意識した製品や取り組みを紹介していました。
特に印象的だったのは、多くの企業が次のような“輸出・進出戦略”を採用していた点です:
•まず自国のハラル認証(タイならCICOTなど)を取得
•次に、輸出先に応じてマレーシア(JAKIM)やインドネシア(BPJPH)などの認証も段階的に取得
•さらに、ヴィーガンやFDA、HACCPといった他の輸出要件にも対応
このように、輸出先の要求に合わせて認証を重層的に取得する動きは、明確な戦略に基づくものであり、日本企業にとっても学ぶべきポイントです。

【認証類を掲げた看板】
また、タイ国内で流通する製品の中には、あえてハラルマークをパッケージに記載しないという事例も見られました。ムスリム層には既に信頼されている一方、非ムスリム層への配慮からあえて表示を控える。こうした柔軟な設計対応も、タイならではの市場感覚の表れでしょう。
イスラム教徒が人口の約5%にとどまるタイですが、ハラルへの取り組みは「国内対応」にとどまらず、「輸出を起点としたグローバル戦略」として高度に体系化されています。制度面・インフラ整備・企業の意識、いずれも先進的であり、今後の国際展開を目指す日本企業にとっては有効なベンチマークとなります。
もはやタイは、単なるコストメリットのある製造委託先ではなく、“ハラル輸出戦略のハブ”としての可能性を持つ存在です。
中東・東南アジアへの展開を見据えるなら、パートナー選びの候補としてタイ企業を真剣に検討すべきフェーズに来ています。
ハラルビジネスへの参入やOEM選定にお悩みの方は、ぜひハラル・ジャパン協会までご相談ください。
文責
ハラル・ジャパン協会
ハラルビジネスコンサルタント 田上明日菜