「ハラルだから」ではなく「おいしいから」――ニューヨークで見た食の多様性 現地レポート1/2
今年の夏、約1カ月アメリカに滞在し、その多くをニューヨークで過ごしました。
ニューヨークで生活していると、さまざまな文化的背景を持つ人が同じ街で暮らしていることを日常的に感じます。特に「食」は、その多様性がかなり分かりやすく表れている分野です。
ニューヨークでは、価格を問わなければ、「食べたいものは大体見つかるのでは」と思うほど選択肢があります。私自身、以前上海で食べた蟹麺が忘れられず、日本ではなかなか見つけられなかったのですが、こちらでは普通に見つけて注文することができました。
ただ、いろいろな文化が一つに混ざっているというより、それぞれの文化が残ったまま同じ街の中に存在している、という方が近いかもしれません。
私が滞在していたのはギリシャ系の人が多いエリアだったため、ホストとの食事を含め、自然とギリシャ系の料理を食べる機会が多くなりました。少しエリアを移動すれば、今度はアジア系、中東系、ヒスパニック系など、街の雰囲気も食の選択肢も変わります。
ニューヨークの食の多様性は、「みんなが同じものを食べる」のではなく、異なる食文化を持った人たちがそれぞれの選択肢を持ちながら、同じ市場で生活していることで成り立っています。
提供する側――「ニューヨーク市場」を一括りにできない
まず、食品を提供する側から見てみます。
スーパーだけを見ても、その違いはかなり分かりやすいです。
高価格帯のスーパーに行けば、オーガニック食品や健康志向の商品、サラダ、高級フルーツなどが豊富に並んでいます。一方で、アジア系、中東系、ヒスパニック系など、特定の食文化に強いスーパーもあります。
また、タイムズスクエアなどではセブンイレブンのようなチェーン店を見かけますが、住宅街では個人経営の小さな食料品店も多く、その地域で暮らす人たちに合わせた商品が並んでいました。
一言で「ニューヨークの消費者」といっても、所得、文化的背景、宗教、健康への意識などによって、求めているものはかなり違います。
日本企業がニューヨークで食品を販売するとしても、「アメリカ人向けの商品」と考えるだけでは少し広すぎます。誰に売りたいのか、その人は普段どこで買い物をして、何を基準に商品を選んでいるのか。そこまで細かく考える必要がある市場だと思います。
【高級スーパー ホールフーズのデリ】
飲食店――「食べられないもの」があることを前提にしている
レストランやカフェでも、多様性への対応力の高さを感じました。
例えば、ヴィーガン向けのアイスクリームなども比較的簡単に見つかります。また、メニューに細かく書かれていなくても、「これは食べられない」「これを抜いてほしい」と伝えると、可能な範囲で対応してくれる店も少なくありませんでした。
宗教、アレルギー、ライフスタイルなど、「何を食べるか・食べないか」の基準が人によって違う環境だからこそ、提供する側もそうした違いに慣れているのだと思います。
ハラルという視点で面白かったのが、街中で見かけるフードトラックです。
中東系の料理を扱う店も多く、ハラルの表示もよく目にしました。ただ、そこでチキンオーバーライスなどを買っているのは、必ずしもムスリムだけではありません。
ここは、今回ニューヨークに滞在していて特に日本との違いを感じた部分です。
【ヴィーガンアイスで有名なヴァン・ルーウェン】
「ハラルだから選ばれる」のではなく、「おいしいから選ばれて、その商品がハラルでもある」
日本でハラルというと、どうしても「ムスリム向けの特別な食事」として考えがちです。しかしニューヨークでは、ハラル食品がもっと普通の食の選択肢として市場に入っているように見えました。
これはヴィーガンなどでも同じです。ヴィーガン向けの商品だからといって、彼らだけが買うというわけではありません。味や話題性、商品の魅力があれば、それ以外の人にも選ばれます。
特定文化の商品が属性を超えて広がる例として、抹茶もその一つです。ニューヨークでは抹茶を扱うカフェを至るところで見かけ、実際に飲んでいる人も若者だけではありませんでした。「日本の商品だから」というより、すでに現地の選択肢の一つとして受け入れられているように感じます。
購入する側――自分の「食べるルール」を持っている
一方、購入する側を見ていて感じたのは、自分が何を食べるのかについて、それぞれがかなりはっきりした基準を持っていることです。
宗教上の理由で食べないものがある人もいれば、ヴィーガン、オーガニック、健康志向など、自分で決めたルールを持っている人もいます。そして、それを店側に伝えることも特別なことではありません。
希望するものがなければ、別の店を探す。必要であれば事前にインターネットで調べる。商品を買うときには表示や認証ロゴを確認する。
提供する側がすべての人に合わせるというより、店側が「何を提供しているのか」を示し、消費者も自分の基準に合うものを選ぶ。その関係が自然にできているように感じました。
これは、ニューヨークのように異なる背景を持つ人が多く暮らす都市だからこそ発達した一つの形なのかもしれません。
「全部に対応する」が正解ではない
ニューヨークで食を見ていて面白かったのは、ハラル、ヴィーガン、オーガニックなど選択肢は多いのに、すべての店が「全員に対応しよう」としているわけではないことです。
店側が選択肢を用意して、消費者も自分に合うものを選ぶ。それが当たり前になっているように感じました。
これは、日本企業が海外向けの商品を考えるときにもヒントになると思います。
ハラルも、ヴィーガンも、オーガニックも……と全部に対応しようとすると、当然コストも手間もかかります。まずは「誰に食べてもらいたいのか」を決めて、その人たちに必要な対応を考える方が現実的です。
そしてもう一つ面白かったのが、ハラル食品を食べているのはムスリムだけではないことです。
ニューヨークでは、ハラルで有名なお店にもムスリムに限らず多くの人が並んでいます。「ハラルだから」というより、単純においしいから、人気だから食べる人も多いのだと思います。
「ハラルだから売れる」のではなく、「おいしい商品が、ハラルにも対応している」。
ハラル対応を考えるときも、認証や対応そのものをゴールにするのではなく、まず商品として「食べたい」と思ってもらえること。そのうえで、食べられる人の幅を広げていくという考え方も大切なのではないかと、ニューヨークで過ごして感じました。
弊会では、ハラルをはじめとする多様な食のニーズへの対応や、イスラム圏を中心とした海外市場への展開に向けた商品・販売戦略を支援しています。ハラル対応や海外展開をご検討されている企業の方は、お気軽にご相談ください。
文責
ハラル・ジャパン協会
田上明日菜


































