アブダビ投資フォーラム、東京で初開催──日本企業との連携強化
アブダビ投資フォーラム、東京で初開催──日本企業との連携強化
2025年5月9日、都内のホテルでアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資事務所(ADIO)と、アブダビ・グローバル・マーケットの主催で、「アブダビ投資フォーラム」が開催されました。フォーラムでは、シハーブ・アフマド・アル・ファヒーム駐日UAE大使の基調講演と、アブダビの投資環境に関するADIOの講演のほか、アブダビ政府や企業関係者により、「アブダビ:グローバル展開を支えるビジネス拠点」「技術インフラを構築してグローバルな成長を加速させる」「アブダビ:世界の資本が集まる都市」の3つのテーマでのパネルディスカッションが行われました。
近年、アブダビは石油中心経済から多角的経済へ方向転換し、先端的製造業や観光、デジタルイノベーション、再生可能エネルギーの分野へ戦略的に投資しています。また、包括的経済連携協定(CEPA)の締結にも注力し、すでに27カ国と合意しており、2024年9月に交渉を開始した日本とのCEPA締結にも強い意欲を見せていました。
みずほ銀行・伊藤忠商事とMOU締結
フォーラムでは、アブダビ投資庁(ADIO)が、みずほ銀行グループおよび伊藤忠商事との間でMOU(基本合意書)を締結したことを発表。みずほグループとは、日本とアブダビ間の投資を加速させるために連携を強化。一方、伊藤忠商事とはアブダビの成長市場への日本企業進出支援を目的とした協力体制が整備されたことになります。
シーパーネットワーク26ヶ国と覚書締結
同日、ADIOは「シーパーネットワーク」として、26ヶ国にまたがる物流・貿易ネットワークに関する協定も締結。これによりアブダビは世界各地の市場とつながる戦略的ハブとしての地位をさらに強固にしました 。
世界クラスのインフラと行政プロセスの迅速化
アブダビはフリーゾーンにおいて、モダンかつ広大なインフラ整備を進めています。現在、9万㎡以上の実用的な開発が進行中、また15万㎡規模の物流エコシステムも稼働しています。行政手続きでは、政府直轄のワンストップ窓口により、輸出関連の免許取得もわずか6分で完了するなど、迅速・効率的な制度を実現しています 。
規制協力と官民連携による展開の加速
アブダビでは官民が連携し、規制整備と対応を同時並行で進める体制を整備。投資家は規制に縛られることなく、スピーディーにビジネス展開が可能です。税関においては人手を介さない“見えない税関”を導入し、近隣国にも提供予定という高度なシステムも披露されました 。
ハブ都市機能と多層的な投資環境
アブダビは単なるマーケットではなく、世界への出発点・ハブとしての機能であると明言しました。中東、アジア、アフリカ、ヨーロッパを結ぶエコシステムを備え、住宅やインフラは世界で5位規模。スタートアップから大企業まで幅広い投資機会があり、インドへのFDI(対外国直接投資)なども活発化しています 。
社会インフラ・生活環境、リスク対策も万全
アブダビは若年層の企業や家族を含む投資家にも魅力ある環境の提供として、安全性と高い生活の質や、ディズニーワールド33カ所へ約4時間圏内という利便性も有している点を挙げました。英国法に基づく規制体制や高度なコンプライアンス体制を整え、クロスボーダーの信頼と安全を確保、またスマートシティや研究支援によるデジタル化も進み、これらは日本の高齢化対策の参考にもなります 。
安定と革新の両立するグローバル拠点
アブダビはCOVID–19の影響下でもグローバル金融の信頼を保ち、日本企業にとって安定的かつ革新的な投資先。ワンストップ投資事務所による統合的支援により、地域・業種を超えて“アブダビはどこよりも優れたビジネスの入口”となる可能性を示しました。
今回の投資フォーラムでは、アブダビが投資家を募るにあたってサウジアラビアに勝るポテンシャルを持ち合わせていることを示しました。積極的でありながら華美なりすぎない会場の設えでのプレゼンテーションは、アブダビのスマートさと可能性に対する自信に裏付けされたものであると感じられました。そして今回のフォーラムで見せたアブダビの姿勢は、日本の企業にとって中東とのビジネスをしやすくするものではないでしょうか。
これは余談となりますが、フォーラム終了からしばらく経過したある日、「フォーラムに参加のみな様へアブダビの10年ビザを発行します」というメールが届いたのには驚きました。アブダビは本気でスタートアップや若い企業にも投資を呼びかけ、それをバックアップするだけの用意があることを示したのかもしれません。今後、このフォーラムを契機に、アブダビを起点とした日本企業の投資と協業が一層進展することが期待されます。
文責
(一社)ハラル・ジャパン協会
事務局 安部(真由実)ひろ子