訪日ムスリムは日本で何を食べている? ――美味しさと安心、その“ちょうどいいバランス”を求めて
日本を訪れるムスリム観光客は年々増えていますが、彼らは実際に日本でどのような食を選び、何を楽しんでいるのでしょうか。
現場の声やヒアリングを踏まえると、「できる限り日本らしい料理を楽しみたい。しかし宗教的に安心して食べられることも大切」という、ごく自然で実践的な行動が浮かび上がります。

まず彼らが向かうのは、やはり“日本を感じる食体験”です。寿司や刺身、天ぷら、海鮮丼などの魚介中心のメニューは、ハラル認証がなくても安心して食べやすく、人気は非常に高いままです。特に寿司店や海鮮系の定食店は、ムスリム旅行者が店頭で迷わず入れる
「安全・日本らしい・美味しい」の三拍子がそろった存在です。

一方で、ここ数年目立ってきたのが、もっとカジュアルな日本食への関心です。「せっかく来たのだから、本場の日本のラーメンを食べてみたい」「現地で食べる日式カレー、牛丼に挑戦したい」といった声は若い旅行者を中心によく聞かれます。豚や酒を使わないラーメン店は以前より大幅に増え、ハラル鶏ガラや魚介ベースでつくる“ハラル対応ラーメン”は、今や訪日ムスリムの鉄板メニューになりつつあります。たこ焼きや和スイーツなどの食べ歩き系も、気軽さと“日本っぽさ”が受けて人気が伸びています。

もちろん、肉料理に関しては慎重です。牛肉や鶏肉を選ぶ際にはハラル認証を確認する人が多い一方、「オーストラリア産ビーフなら安心だから食べる」という、経験則に基づいた柔軟な判断をする旅行者も一定数います。とはいえ、基本的には“肉はハラル認証がある方が安心”というのが王道で、その姿勢は今後も大きくは変わらないでしょう。
興味深いのは、肉料理でない場合なら「ハラル認証が必ずしも絶対条件ではない」という点です。多くのムスリムは、豚とアルコールが使われていない料理であれば、認証がなくても食べています。大切なのは“店がどれだけ情報を見せているか”です。調味料に動物性成分が含まれているか、揚げ油は共有か、酒はどの工程で使われるのか。こうした情報がきちんと示されていれば、自分で判断できることで安心し、店舗への信頼も高まります。
つまり、ムスリム旅行者に求められているのは、完璧なハラル対策ではなく、誠実な情報開示と、ほんの少しの配慮です。実際、多くの訪日ムスリムは「日本はイスラム圏ではないのだから、完全対応でなくても仕方ない」と理解しています。それでも安心して食べられる選択肢があると、日本旅行の満足度は一気に高まります。
日本食を“楽しんでもらう”ためのハラル対応は、決して障壁ではありません。むしろ、“日本での食体験を広げる橋”になります。訪日ムスリムが食の選択で困らない環境づくりは、日本の観光力を高めるうえで確実にプラスになるはずです。
弊会では、ムスリム試食会やメニュー評価、現場向けのハラルポリシー作り、さらにはハラル認証取得に関する支援まで幅広く行っています。「何から始めればいい?」「うちの店でも対応できる?」といった初歩的な段階でもまったく問題ありません。
まずは一度、ハラル・ジャパン協会へお気軽にご相談ください。
文責
ハラル・ジャパン協会
ハラルビジネスコンサルタント 田上明日菜






























