なぜバイオマスナフサはハラル認証が難しいのか? ――サステナブル時代の「見えない課題」
最近、化粧品や日用品の分野でも「バイオマスナフサ」という言葉をよく耳にするようになりました。石油ではなく、植物油や廃食用油など“再生可能資源”から作られたナフサで、カーボンニュートラルに対応できることから、日本のメーカーでも採用が広がっています。

ところが、このバイオマスナフサは、環境には良いのですが、ハラル認証となると一気にハードルが上がります。理由はシンプルで、「原料の出どころが証明できない」ことにあります。
バイオマスナフサはパーム油などの植物油だけでなく、牛脂や豚脂、さらには出所が不明な廃食油を混ぜて作られる場合もあります。工業的に生成されるため、最終的な分子は同じになってしまいますが、ハラルでは“分子が同じだからOK”とはなりません。“何から作られたか”のトレーサビリティが必須です。
さらに厄介なのが、化学メーカーで一般的に使われている「マスバランス方式」です。
これは、石油ナフサとバイオマスナフサを混ぜてクラッカーで処理し、帳簿上で「〇%はバイオ由来」と扱う仕組みです。しかし実際の製品では、どのナフサが使われたのか分子レベルで区別はできません。
JAKIMやBPJPHといった公的ハラル機関は、「中身が完全に安全(ハラル)と証明できないもの」は原則NGとしています。つまり、マスバランス方式の原料は“ハラル非対応”となるケースがほとんどです。
では、化粧品メーカーに道はないのでしょうか。
実は一部のメーカーでは、完全に植物由来原料だけを使い、石油系と混ざらない“専用ライン”での生産を始めています。これは確かにハラル認証を取得しやすいですが、コストが高く、量産には向きません。結果として、多くの企業はバイオマスナフサを避け、ココナッツオイルやパーム核油など、出どころが明確な植物由来原料を選ぶ方向に回帰しています。

結論として、現状のバイオマスナフサとハラル認証の両立は極めて難しい状況であるといえます。環境配慮とハラルの両立は重要なテーマですが、少なくとも現段階では、メーカー側の工夫だけで突破できる問題ではありません。原料メーカー・認証機関・ブランドが、より透明なサプライチェーンの構築に動けるかどうかが、今後の競争ポイントになります。
サステナブル時代の“見えないリスク”として、今こそ各社で検討する必要があるでしょう。
弊会では、バイオマスナフサや原料のハラル性確認、ハラル認証取得支援など、実務に即したサポートを行っています。ご関心のある方は、まず一度、ハラル・ジャパン協会へお気軽にご相談ください。
文責
ハラル・ジャパン協会
ハラルビジネスコンサルタント 田上明日菜






























