台湾で売れる日本商品とは?現地小売のリアルとムスリム対応の課題 (台湾レポート3/4)
2025年6月、台湾の小売企業2社を訪問し、ムスリム対応や日本製品の販売状況についてお話を伺いました。ダイバーシティ対応が社会的に注目される中、現地小売業者が抱える課題と、日本企業にとっての可能性が見えてきました。
ある大手小売企業では、ムスリムや外国人新住民の増加を背景に、ダイバーシティ対応の必要性を感じてはいるものの、具体的に何をすべきかがまだ不透明とのことです。
現状では、ラマダンの時期にイフタール向け商品を一部店舗で販売したり、台北市のイードイベントに出店してハラル対応の商品を販売するなど、スポット的な取り組みに留まっています。「どれくらいのニーズがあるのか」「どのような商品が求められているのか」といった基本的な情報が不足しており、試作レベルから次の一歩に進めないことが課題となっています。
一方、ビーガン・ベジタリアン対応では成果が出ており、台湾のベジタリアン層の消費者が“ボリューム感”を求めている傾向を踏まえた商品開発が評価されているそうです。こうしたデータの蓄積と成功体験は、ムスリム対応にも活かせる可能性があります。
別のディスカウント系小売では、ムスリム層の来店は少なく、現時点ではハラル対応は行っていないとのことでした。ただし、日本製品の取り扱いは非常に多く、店内のほとんどが日本語表記の商品で占められている印象を受けました。
人気商品としては、じゃがポックルや一蘭ラーメン、化粧品類などが挙げられます。日本での使用経験をもとに、多少価格が高くても購入する消費者が多いようです。ただし、全体としては、ドライシャンプーやヘルメット洗浄スプレーといった日用品の方が、生活に密着した売れ筋商品になっているとのことです。
また、台湾の人々は週末に外出することが多く、外食が一般的なライフスタイルです。価格には敏感な一方で、付加価値がある商品には支出を惜しまない傾向があります。こうした行動パターンに日本ブランドがマッチすれば、売上を伸ばす余地は大きいと言えるでしょう。
台湾市場でのビジネスには、いくつかの壁もあります。たとえば、日本で流行した商品を台湾でそのまま再現することが難しいケースもあります。これは、添加物に関する台湾の規制が日本よりも厳しいためです。また、現地製造に切り替えることでコストを抑えられる反面、MOQ(最小発注数)などのハードルが存在します。
一方で、広告やSNSによる情報発信力の強さは台湾市場の大きな魅力です。実際に、ソフトクリームの販売をSNSで告知したことで話題になり、売上が伸びたという事例もあります。マーケティング次第で、製品の認知度や販売数を大きく伸ばすことが可能です。
台湾の小売現場では、ムスリム対応の重要性は理解されているものの、「どこから始めればよいか」が課題となっているようです。しかし、日本製品への信頼と支持は根強く、「正しい売り方」と「現地ニーズに即した商品開発」ができれば、大きな可能性が広がっています。
台湾市場は、ムスリムを含めたダイバーシティ対応における“先行モデル”であり、日本企業にとっては貴重なテストマーケットです。いまこそ、戦略的に一歩を踏み出すタイミングかもしれません。
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文責
ハラル・ジャパン協会
ハラルビジネスコンサルタント 田上明日菜