ウズベキスタン進出の新潮流──中央アジアの可能性
2025年9月5日、ジェトロ主催の「ウズベキスタン進出法務の基礎」ウェビナーが開催され、ウズベキスタンの概要と日本企業の進出に向けた法的知識が共有されました。
人口の約90%がイスラム教徒であるウズベキスタンは、中央アジア最大の巨大ハラル市場でもあり、日本企業にとってもハラルビジネス参入を検討する価値のある地域です。
ウズベキスタン:中央アジアのゲートウェイとして加速する経済成長
中央アジアの中心に位置するウズベキスタンは、地域最大の市場として国際的な注目を集めています。
約3,800万人もの人口をもち、アジア・中東・欧米を結ぶ地政学的要衝としての役割を強めているため、経済・物流・外交の面で戦略的価値が高まっています。
2025年上半期のGDP成長率は7.2%と高水準を維持しており、政府は2030年までにGDP規模を現在の約1,150億ドルから2,000億ドルへと倍増させる目標を掲げています。こうした成長の背景には、政府主導によるインフラ整備と、民間による直接投資の活性化があります。
特に近年は、外国企業の進出が加速しており、IT産業や食品加工、製造業など多様な分野で外資が流入。経済特区の設置や税制優遇措置など、投資環境の整備も進んでいます。
ウズベキスタンは中央アジアの結節点として国際ビジネスの新たな拠点となりつつあるのかもしれません。
進出形態と法務の留意点
進出パターン | 特徴 |
駐在事務所 | 現地の情報収集・市場調査にも有効 |
現地法人設立 | 独資・合弁いずれも可能 |
PE(永久的施設) | 地域社会に効果的な貢献型の施設建設 |
直接販売・代理店 | ブランドの保護など契約管理が重要 トラブル防止策が必須 |
ウズベキスタンでは、外国企業の進出を促進するための制度整備が進んでおり、特に経済特区の活用が注目されています。
経済特区に進出する外国投資家には、税制面での優遇措置が適用され、法人税や関税の減免、ビザ取得の簡素化などが含まれ、事業立ち上げのスピードと効率性が向上します。ただし、適用条件や制度設計が異なるため、進出にあたっては現地法務に精通した専門家の助言と合わせて戦略的に取り組むことを推奨します。
外資規制については、ウズベキスタンは比較的緩やかな姿勢を取っており、諸外国で一般的に見られる「ネガティブリスト(外資参入禁止業種)」が存在しない点は、投資先としての魅力のひとつでしょう。例外として、マスメディア分野においては外資比率が30%未満に制限されており、情報発信に関わる事業には慎重な対応が求められます。
事業環境の整備が進む一方で、法令のみならず契約や申請書類など実務レベルのビジネス文書ではロシア語とウズベク語が主に使用されています。英語は補助的な言語として位置付けられており、これは日本企業にとっては言語的ハードルを感じる部分となるのもしれません。
とはいえ、言語の壁はあるものの、制度的な柔軟性と戦略的な立地を兼ね備えたウズベキスタンは多くの外資企業にとって魅力的な進出先となる可能性を秘めています。
法制度とリスク管理
ウズベキスタンへの進出を検討する外国企業にとって、法制度の理解とリスク管理は不可欠な要素となっています。特にウズベキスタンでは、大統領令や社会的変化に応じて法改正が短期間で行われる傾向があり、現地の制度や規制に関する最新情報の把握が重要です。
こうした流動的な法環境に対しては、現在日本を含む58か国と二か国間投資協定を締結しており、
外国投資家の権利保護や投資活動の透明性を確保する枠組みも整備されているようです。
ハラル×日本品質
ウズベキスタンにおける日本企業の進出は、物流コストやアクセスなどの課題もあり現状そこまで多くはないものの、2019年から2024年のわずか5年で拠点数は3倍にも伸びています。今後も日本食レストランやホテル、日本製品が増加し日本ブランドの周知と日本品質への信頼を得られる可能性は十分にあるでしょう。もっとも、ハラル認証を取得した日本製品は、宗教的安心と品質への信頼を両立できる存在として、市場拡大が期待されます。
ハラルビジネスの可能性を見出せる地として、協会としても継続的に動向を追い情報取集とコンサルティングで企業支援を行っていければと思います。
文責
ハラル・ジャパン協会
事務局 広報PR担当
株本 あいか